「鯨に魅せられた男 ~装身具作家 稲田浩の軌跡~」最終回
「75歳の装身具作家の挑戦!」
最終回は50分近い長い番組になりました。
番組のラストは、大阪府八尾市の古民家ギャラリー「茶吉庵」での
稲田浩装身具作家五十五周年記念展の初日でしめくくりました。
普通なら、個展に向けての思いや、その準備過程、新しい鯨ひげ装身具の制作過程などを
紹介したうえで、装身具作家55周年記念展は、稲田浩の集大成として「大成功でした! めでたし、めでたし」
というハッピーエンドの流れを想像されていたかもしれません。
ですが、番組の50分の中で約20分を占めている、稲田浩氏の鯨工芸の師匠・小柳佐喜男氏に
関しての言及場面は、驚きと違和感を感じられた方もいらっしゃるかと思います。
稲田浩ファンの中では賛否が分かれるところかもしれませんが、それを承知の上で、
私たち番組制作チームはあえてこの場面を入れました。
なぜなら、稲田氏に鯨工芸の技術指導をした、いわば鯨工芸家としての原点である師匠・小柳佐喜男氏の
名誉のためにも、これまで稲田氏が師匠について誤解していたことを正し、小柳氏が書き残した鯨工芸への
思いと夢を伝えておくこと、そのやりとりの過程を動画として残しておくことは、避けて通れないと判断したからです。
それは、稲田氏が今後、正倉院の宝物・鯨鬚金銀絵如意(げいしゅきんぎんえのにょい)の復元を
完成させる過程で、鯨工芸関係者ひいては鯨工芸界との関係を改善していくことが大事であり、
番組として、その環境を整えておくことがとても重要だと考えたからです。
私たちの中でも少し議論がありましたが、最終的にはプロデューサーである冨上の判断で、
この場面をそのまま入れて番組を公開することにしました。
番組制作のために、小柳佐喜男氏やその周辺の調査に尽力し、知りえた情報から総合的に判断して、
最終回のあの場面を腹をくくって「演出」してくださった構成・演出・撮影の中島雄一氏には
ことばに表せないほどの感謝の気持ちでいっぱいです。
中島氏には番組の予告編にはじまり、第1回から最終回まで、綿密な調査と情報収集力、
物事への訴求力と洞察力と判断力、その上に立った構成・演出、撮影と、あらゆる
プロフェッショナルの総合力を発揮して、素晴らしいドキュメンタリー番組に
仕上げていただきました。プロデューサーとして、全幅の信頼を置いて全てを
お任せしてきた中島雄一氏に最高の感謝を捧げたいと思います。本当にありがとうございました。
そして俯瞰的視野から番組の構成・演出への的確で、ときに厳しいご指導をいただいた山本保博氏、
深みと説得力のあるナレーションで番組を締めてくださった女優の二木てるみ氏、
随所で光る音楽デザインを提供くださったロアサウンドラボの齋藤満氏、良好な録音スタジオを
ご提供くださった三塚幸彦氏、そのほか、番組制作にかかわってくださったすべての方々に
心からの感謝を捧げます。
最後になりましたが、このドキュメンタリー番組の企画・制作を快諾してくださった
装身具作家の稲田浩氏にこころからお礼申し上げます。
番組を作らせてくださって、本当にありがとうございました。
これまで誰もなしえなかった「如意の復元」という歴史的な大仕事に挑み続ける
稲田浩氏の姿を、私たちは今後も大きな愛をもって見守っていきたいと思います。
そして、「鯨に魅せられた男」を第1回から通してご視聴くださった視聴者の皆様にも、
この場を借りてこころよりお礼申し上げます。ありがとうございました。
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