
年も押し詰まり、毎日少しずつあちこちを片付けたり掃除したり。
今日、ふと原稿を入れた箱に目が留まった。
そこには山内令南さんの遺稿が入ったレターパックがあり、
何気なく手にとった原稿の中に新聞の切り抜きがあった。
山内令南作品集を出版し、予約の方々への発送もひととおり済ませて、
改めてもう一度目を通してみた。記事の内容をここに少し紹介してみたい。
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食道がんを病んだ女性を主人公にした小説「癌だましい」で、今年(注:2011年)5月に
文學界新人賞を受賞した直後、52歳で死去した山内令南さんの受賞作が単行本化された。
(中略)
山内さんは、岐阜県大垣市のお寺に生まれた。友人の女性(51)は、「無口な人なのに、
忘れられない人でした」と振り返る。若い時に結婚をしたが離婚し、看護師の資格を取得。
病院や介護施設で働いたが、この5年間に両親と兄を亡くし、親しい親戚はなかった。
孤独な境遇を慰めるものの一つが、書くことだった。地元の小説コンクールの常連入賞者で、
「大根注意報発令中!」「ん」など、不思議なタイトルの掌編小説集も出版している。(中略)
昨年(注:2010年)6月に食道がんの告知を受け、一人暮らしをする自宅アパートで
療養を続けた。がんの悪化で物がのみ込めなくなり、一時期は点滴だけで命を保っていた。
友人がこの状況に気づき強く入院を勧めたときは、「体がひからびて見えた」という。
病気と孤独を抱え、不幸としか言えない境遇だった。しかし、その過酷な環境が、30年の
執筆歴を持つ山内さんの生と死、文章をめぐる感覚を研ぎ澄ませ、大手出版社から商業出版
できるほどの鮮烈な作品を書かせたとも言える。
山内さんの死後、この友人は、遺品整理中に見つけた彼女のメモ書きを棺の中にそっと収めた。
〈書くは命 書くは使命〉
(讀賣新聞2011年8月16日)
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今回出版した山内令南作品集『夢の誕生日』にもこんな短歌がある。
私の使命は何かと考えれば「書くことなり」と天の即答
山内令南作品集『夢の誕生日』 http://azamiagent.com/
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