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俳人・津沢マサ子さんのこと

今日は東京での最後の日。

今回の滞在は本当にたくさんのご縁をいただいた。

亡くなった娘が今でも私を支えてくれているんだな、と思う。

ところで、今日、久しぶりに私の東京の母・津沢マサ子さんに会いに行く。

津沢さんのことを書いた以前の日記を読み返してみて、今日はもう一度

彼女との出会いについて振り返ってみたい。

*******
〈2010年7月17日の日記より〉


金曜日の午前中にいっぽんの電話。

えーっと、ト、トミウエさん?

あのー、トカミですが…。

わたし津沢マサ子ですけど。

えーっ!ほんとに津沢さんですか。

わたし津沢さんの大ファンなんです!

というところから始まり、延々としゃべるしゃべるしゃべる。

なんだが昔からずっとお友達だったみたいに。

まるで長い長いご無沙汰の時間を埋めるみたいに。

そして、こんど上京したらお目にかかる約束まで

してしまった。

津沢さん、腱鞘炎で文字が書けなくて句集のお礼状もなかなか

書けないと嘆いていらっしゃったけど、そのお声にはハリがあり

たましいの勢いのある人だと改めて思いしる。だから彼女の書く

俳句はいつまでも胸を打つ。ことばの永遠を思わせる人。

電話を切ってしばらく、たましいの震えが止まらなかった。

以下、「あざみ通信」に津沢マサ子を書いた部分の引用。

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友人に貸したままになっていた津沢マサ子の句文集
『風のトルソー』が私のところへ戻ってきた。
俳人・津沢マサ子。
俳人では誰が好き?って尋ねられたら真っ先に名前が浮かぶ
俳人のひとりだ。
ひさびさに戻ってきた『風のトルソー』を開いてみた。

     ばらばらになって春待つガラス壜

     蠅生まれ世にぺらぺらと週刊誌

     忘れいし晩夏は納屋のかたちせり

     西日だらけの家が犇きあう時刻

     自分とはいずこを走る秋の雲

     雁首をならべて枯れしものらの日

ひらくページのどの句も心を打つ。津沢マサ子はやっぱり筋金入りの俳人だ。

     桃咲く夜壁もからだも邪魔になる

     辻褄をあわせて春に間にあわず

     手が足が伸びて荒野に五月くる

     家族とは西日のなかのかげとかげ

そして、友人は 「天高くたった一人ということば」
を胸に刻みましたと、手紙に書いてくれた。
津沢マサ子はいい。
日常のなんでもない場面で、ふっと口をついてでてくる津沢の俳句。
人間存在の根源を厳しく鋭く問い続ける姿勢は、今も健在だ。

●●●●

80歳を過ぎたこの偉大な俳人と、どうしてずっと昔から
知ってたみたいに、ずっと友だちだったみたいにしゃべれた
のだろう。ことばはときに不思議な驚くべき縁を運んでくれる。

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そして、今年、津沢さんは86歳になった。

津沢マサ子は今でも生身の人間というより

たましいそのものが立っているみたいな人だ。

ありがとう。
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